☆消費者安全のちいさな家☆

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12月6日カネミ油症についてプレゼントークしました

こんにちは土庫澄子です

はやいもので今年もあと半月ばかりになりました

 

みなさまいかがお過ごしでしょうか?

カネミ油症についてプレゼントークをしました

 

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2020年12月6日、東京、名古屋、高砂、福岡、五島、長崎をオンラインでつないで カネミ油高砂集会が開催されました わたしは30分のプレゼントークをさせていただきました

 

チラシはこちらです

 

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翌日の長崎新聞に会の模様を紹介した記事がございます

 

this.kiji.is

 

 はじめてのオンラインプレゼンで、内容もさることながらひとり配信に緊張しました

準備した当日朝ギリギリの原稿をアップしておこうとおもいます

 

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 タイトルは、「原因化学物質PCB製造者の社会的責任ーPL法の立法思想から考える」です。

 

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はじめに

 土庫(とくら)です。今日はお話する機会をいただき、ありがとうございます。

 

PL法とは、立法の頃からつきあいがございます。昨年の夏、被害者や支援者の方々にお会いし、この一年、みなさんのお話を聞きながら思うことを、今日はおはなししたいとおもいます。

 

よろしくお願いいたします。

 

カネミ油症はどんな問題?

カネミ油症はどんな問題でしょうか?

 

いろいろなファクター

カネミ油症には、いろいろなファクターがあります。

 

環境公害問題

 ひとつは環境公害です。大気汚染、海洋汚染、土壌汚染といった環境が汚染され、人間という環境が汚染される問題です。

 

人権問題

ふたつめは人権問題です。有毒な物質によって現代の医学をもってしても根治が難しい健康被害が起き、生活全般に深刻な影響が出る、子や孫にまで健康被害が及ぶという問題です。

 

加工食品の欠陥問題

 みっつめは、加工食品の欠陥問題です。有毒な原材料や、有毒な物質の混入によって健康被害が起きたという問題です。

 

これらの問題はつながっています。

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今日は、製造工程で有毒物質が混入した欠陥食品のはなしから、PCBを製造した者の社会的責任と次世代被害の救済に焦点をあてて、現在のカネミ油症を考えてみたいとおもいます。

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おはなししたいのは、1 PL法の立法思想とカネミ油症、2 PCBを製造した者の警告義務、3 PCB製造者の社会的責任、4 カネミ油症の原因事業者はだれか? 5 関係の4者で協議し、これからの救済を考えていく必要性、でございます。

 

これらの問題はつながっています。

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PL法(製造物責任法

まず、PL法、製造物責任法です。この法律はなんのためにつくられたのでしょう?

 

PL法の機能

 PL法の機能はみっつあります。裁判規範、社会的な紛争解決規範、行為規範です。

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裁判規範は、欠陥製品による被害について製造者の法的責任を判断する規範です。

 

社会的な紛争解決規範は、話し合いによって紛争を解決する規範です。

 

行為規範は、製造者・輸入者は商品の安全確保に努め、消費者は製品を正しく使用して事故防止に努めるべきという規範です。

 

PL法の立法思想 

PL法の立法思想は、これら全部の内容を備えています。

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立法当時のPL法 

PL法が公布されたのは、平成6年です。20年という年月をかけて検討され、役割についても幅広い検討がなされています。

 

立法当時のPL法の思想をみてみましょう。

 

平成5年、国民生活審議会は、PL法を立法すべきことを答申しました。そこでは「製造物責任制度を中心とした総合的な消費者被害防止・救済」とあります。PL法は民事のあたらしい法律でありながら、行政のあたらしい規範としての役割を担うものと考えられているのです。

 

現在のPL法

 現在のPL法は、平成21年に制定された消費者安全法とともに、消費者安全の社会システムを発展させる柱となっています。

 

行政もプレイヤー 

PL法のもとでは行政もプレイヤーとなり、消費者被害の防止や救済に関する施策を推進していくというのが、スタートからの基本的なスタンスなのです。

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PL法は生ける法 

PL法は安全にかかわる社会システムを発展させていく生ける法といえるでしょう。

 

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カネミ油症事件をきっかけとする安全立法ー化審法

 カネミ油症事件をきっかけとして、安全に関する立法がなされています。事件が発覚して5年後の昭和48年、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」が制定されました。略して化審法です。

 

この法律は、化学物質による環境の汚染を防止することを目的とします。

 

化審法の内容は、新たに製造・輸入される化学物質に事前登録制度を設け、市場に流通したあとは継続的に管理する措置などを定めています。

 

昭和49年6月10日、ポリ塩化ビフェニール、略称PCBは、化審法にもとづいて第一種特定化学物質に指定されました。

 

もうひとつの立法ーPL法

 カネミ油症事件をきっかけとするもうひとつの立法がPL法です。

 

事件の発覚から4年後の昭和47年春、我妻榮教授を中心として製造物責任研究会が発足しました。昭和50年10月には立法提案を公表しました。

 

公表にあたって、研究会のメンバーであった四宮和夫教授は、このように書いています。

 

森永ドライミルク事件・サリドマイド事件・カネミオイル事件・欠陥車問題など一連の事件が示すように、現代の事業者は、程度の差こそあれ、商品の安全性に関する一般消費者の期待を裏切って、欠陥商品をたえず社会に送り出している。欠陥商品によって消費者の受ける被害は、現代社会の構造に根ざす「構造的被害」と呼ばれるにふさわしい害悪である。この害悪は可能なかぎり除去すべきであり、まず、そのことを政治と行政に期待したい。 

 

時代はくだって、平成5年に、国民生活審議会がPL法を立法すべきと答申した際に、カネミ油症事件の裁判に言及しています。立法の機が熟した頃の政府部内の検討においてもカネミ油症事件は意識されていました。

 

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カネミ油症事件はPL法の立法事実

 社会的に大きな関心を呼んだ事件や問題の解決が、当時の制度のもとでは実務的にたいへんむずかしく、困難がつきまとったので、今後は解決しやすくするために立法しようというとき、事件や解決までのいきさつを立法事実ということがあります。

 

カネミ油症事件をきっかけにPL法は制定されたけれども、当の事件は長年未解決のままといわれています。カネミ油症の解決がたいへん困難であったので、今後は解決しやすくするために立法したといわれ、被害者は納得できるでしょうか?

 

出来上がったPL法の立法思想に照らしてそれでよいのだろうか?というはなしになるわけです。

 

PL法の立法思想からカネミ油症事件をみる 

はじめに申し上げたとおり、PL法はみっつの規範性をもっています。PL法は裁判規範のみならず、社会的な紛争解決規範、行為規範であり、消費者事故の防止・救済に関わる行政を推進する柱として構想されています。

 

PL法は、事件がいつ起きたかとは関わりなく、いまの消費者被害の防止・救済の中心となる役割を担っているのです。

 

すこし整理してみましょう。

 

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裁判規範としてのPL法

まず、裁判規範としてのPL法です。カネミ油症の原因食品であるカネミライスオイル、原因化学物質であるPCBに、PL法は適用されません。

 

PL法はこの法律の施行後、つまり平成7年7月1日後に製造業者等が引き渡した製造物に適用されます。昭和43年に発覚した事件の製品には適用がないのです。

 

社会規範としてのPL法

では、現在のカネミ油症にとって、社会的な紛争解決規範としてのPL法はどのような意味をもつでしょうか。

 

わたしは、社会規範としてのPL法は、現在未解決といわれるカネミ油症の救済問題に関して、カネミライスオイルの製造者とPCB製造者の社会的責任を考える基盤を与えてくれるとおもいます。

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昭和のカネミ油症裁判

昭和のカネミ油症刑事裁判、民事裁判では、カネミ油にPCBがどのような経路で混入したのかが問題となりました。民事裁判では、被害者側が主張するピンホール説とPCBメーカー側が主張した工作ミス説の対立は、PCBメーカーに警告義務があったかどうかに関わる問題としても争われました。

 

昭和期のカネミ油症民事裁判は、昭和62年の最高裁での和解で終了し、混入経路の争いは決着がつかないまま終わっています。

 

被害者の気づき

一年ほど前になりますが、被害者の方々がピンホール説と工作ミス説は両立すると話されるのを聞き、判決を読み直し、なるほどとおもいました。両立説は、昭和43年の事件発覚以前から被害者は存在していたという報告と通じるものがあります。事件の全体像を考えるうえで、見事な慧眼だとおもいます。

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ちなみに、昨年9月、この集会で講演された初代厚生労働大臣坂口力先生は、初期の被害者は発覚の前にさかのぼるのではないかと話されていました。

 

PCB製造者のPL責任ーいまのPL法では?

PCBメーカーの警告義務の話からちょっとそれてしまいました。話をもどします。

 

PL法のもとでは、部品や材料のメーカーの製造物責任に関する裁判例が蓄積されてきています。

 

いまのPL法から考えますと、PCBメーカーは、万が一の食品混入リスクを考慮して、食品の出荷前に最終確認すべきことを食品メーカーに指示・警告すべきであったと考えてよいだろうとおもいます。

 

ピンホール説、工作ミス説、被害者から教えられて気づいた両立説、どれをとってもPCBメーカーには指示・警告の義務があるというはなしになるのです。

 

PL法の基礎知識ー材料メーカーのPL責任

工業用材料を製造した者のPL責任といわれてもなんのことやらと思うかもしれません。PL法の基礎知識をご紹介しましょう。

 

PL法は、民法不法行為の特則として、製造物の欠陥によって生じた損害について製造業者等の無過失責任を定めるものです。製造物は、「製造又は加工された動産」と定義され、さまざまな部品からなる最終製品、さまざまな原材料からなる完成品だけではなく、部品や原材料のそれぞれがこの定義によって独立に製造物となります。

 

製品を製造する工程で使用する工業用の材料も「製造又は加工された動産」であるかぎり独立の製造物となるのです。

 

もし仮に、現在、カネミ油症事件のような事件が起きて、PL法が適用されるとしますと、カネミ油と、製造工程で混入したPCBは、それぞれ独立した製造物となり、カネミ油には製造上の欠陥があり、製造工程で熱媒体として使用されたPCB製品には指示・警告上の欠陥があると解釈してよいのではないかとおもいます。 

 

現在のPL法のもとで、立法前に起きたカネミ油症事件の法的な判断をあえて仮想してみました。このような仮想は、カネミ油症事件における企業の社会的責任の基盤となるとおもいます。

 

ふたつのコトバ

けれども、被害者・支援者の方々は、PL、製造物責任というコトバをほとんど使いません。

 

PLとは、英語の製造物責任、product liabilityのPとLをとったものです。被害者や支援者の方々は、一字違いの製造者責任というコトバを使っています。

 

製造者責任は英語ですと、manufacuturers' liabilityです。略せばMLです。今日のイベントのタイトルは「製造者責任を問う」ですから、ML責任を問うとなりますね。

 

どうしてだろうと考えてみました。

 

その理由は、裁判規範としてのPL法をイメージするからだろうとおもいます。裁判規範としてのPL法は、カネミ油症事件に適用がないうえに、工業用の材料メーカーのPL責任については、裁判例が多いわけではなく、世の中ではあまり知られていないのです。

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PL法誕生のきっかけであるカネミ油症事件を、PL法自身が疎外しているようにおもえるのは無理もありません。

 

被害者・支援者の方々は、自分たちが求めるものを言い表そうとすると、製造者責任というコトバがしっくりくるのでしょう。

 

製造物責任とはカネミ油症事件の救済とは関わりがないコトバで、製造者責任はカネミ油症の解決をもたらしてくれると期待を託されたコトバなのだとおもいます。

 

ふたつのコトバは、まったく別の意味合いをもっているのです。

 

製造者責任というコトバ

 ひとつ大事なことがあります。はじめてこのイベントタイトルを見た世の中のみなさんには製造者責任というコトバに込められた中身がうまく伝わるでしょうか? せっかくのコトバは理解されず、途方に暮れている状態ではないでしょうか?

 

製造物責任、PLというコトバではカネミ油症被害者の痛みを受け止めることができない、という被害者の声は、社会のなかで受け皿をみつけられないまま今日まで来てしまったのかもしれません。

 

PL法の立法思想を発展させること

 PL法の立法思想、工業用材料メーカーがPL責任を負う主体となりうることをおはなししてきました。

 

PL法は、カネミ油症事件などをきっかけに、市民の活動を支えとして立法され、立法後は裁判と社会のなかで発展してきました。現在のカネミ油症の解決を目指して立法思想を深め、発展させていくのもPL法の努めだろうとおもいます。

 

社会的な紛争解決規範であり、行政にとっても規範性をもつPL法の立法思想は、立法のきっかけとなった事件を未解決のまま置き去りにしないと考えるのが素直だろうとおもいます。

 

PL法の立法史と製造者責任 

もちろん、こんな風に製造物責任の意味合いを広げていけば十分だ、製造者責任というコトバはもういらない、というつもりはありません。

 

PL法の立法史をたどってみますと、製造者責任というコトバは、べつの立法提案で使われています。

 

さきほどご紹介した製造物責任研究会の立法提案から15年後、学者によるもうひとつの立法提案が公表されました。

 

この提案を出したのは、1990年私法学会報告者グループと呼ばれています。

 

ふたつの立法提案のあいだには、学者ならではの考え方のちがいがありますが、今日はそれよりも、1990年グループがPL法のもっとも基本的な考え方を製造者の特別な責任と言っていることに注目しておきたいとおもいます。

 

昭和62年最高裁での和解

昭和62年3月20日午後2時半、最高裁判所第三小法廷和解室で、伊藤正己裁判長が提示した和解案に、PCBを製造した化学企業と油症被害者755名が同意して、和解が成立いたしました。

 

和解の目的は、カネミ油症事件に関わる当事者のあいだの紛争を全面的に解決することでした。内容は、①PCB製造者に責任がないことの確認、②紛争の一切円満な解決の確認、③今後、本件の被害者が一切の請求、要求等をしない、というものです。

 

事故の発覚から20年、最高裁への上告から3年が経っていました。

 

最高裁和解の意義

裁判長は膨大な記録を読み、被害の実情をわかって解決にあたられたそうです。当時の政治経済的な情勢のなかで、被害者はこの和解を「十分でないが最善の選択」と受け止めたといいます。被害者弁護団の弁護士は、「被害者も弁護団も支援団体も、全力を尽くした」といっています。

 

和解とは・・

 和解とは、お互いが譲り合って紛争を終了させる解決の方法です。昭和62年の和解は、最高裁で裁判官が関与した訴訟上の和解であったようです。

 

この和解は、裁判の当事者でない被害者のひとびとにとってどのような意味をもつでしょうか?

 

仮に百歩譲って、この和解が当時の社会情勢のなかで特別の解決をしようとしたとしても、和解の内容なやはり当事者ではない被害者には及ばないのではないかとおもいます。

 

とりわけ、和解のあとで生まれた次世代の患者さんにとって、この和解は及ばないのです。

 

次世代被害者の救済問題

 次世代の患者さんたちの健康被害は、昭和の裁判当時、医学的にほとんど研究されていない状態でした。

 

ところが、その後、次世代の問題が大きくなってきました。

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カネミ油症の診断基準

次世代の患者さんたちが救済を受けようとしてまずつきあたるのが、油症診断基準の壁です。

 

現在まで診断基準は何回か見直されていますが、血液中のダイオキシン濃度を中心とする診断のあり方は変わりません。

 

ところが、次世代の患者さんたちには、血中濃度が基準に満たなくても、親世代とおなじような症状を訴える方々がいらっしゃるといいます。

 

油症患者の親御さんから生まれた子どもさんは、すでに胎児のときにPCBに暴露したことになりますから、胎児性の被害を訴える患者さんといってよいでしょう。

 

低濃度のダイオキシンによる健康被害

 九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターのウェブサイトをみますと、次世代の症状は、かなりの低用量のダイオキシンで出現し、問題が大きい、けれどもそのメカニズムは十分に理解されていないので対策も難しいとあります。

 

水俣病カネミ油症の患者さんを診てこられた医師の原田正純先生は、カネミ油症の診断基準として血液中のダイオキシン濃度を中心とするやり方が科学的に正しいのか、早くから疑問を提起されています。

 

低濃度ダイオキシン被害ーあたらしい視点

 現在では、ダイオキシン類の内分泌かく乱作用に関心が寄せられるようになっています。内分泌かく乱作用は、まだわかっていない部分が多いようですが、低濃度でからだに悪影響をおよぼす可能性がいわれています。

 

胎児性の油症でも、低濃度での症状について、新しい視点が生まれてくる状況があるのだろうとおもいます。

 

医学の素人を承知であえて申し上げれば、とくに低用量であらわれる症状が問題となる次世代の患者さんについて、血液中のダイオキシン濃度をメインの指標とすることは妥当なのか、ほかによりよい指標があるのではないか、検討していただきたいとおもいます。

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次世代問題の今後ーあたらしい指標

今後、次世代の患者さんたちを油症と診断するなどのために新しい指標が設けられたり、被害者や支援者のみなさんが要望しているように現在の同居家族認定に準じた制度をつくっていくとすると、認定患者さんは増えていく可能性があります。

 胎児性油症の救済

昭和62年の和解が百歩譲って最善だったとしても、胎児性油症については、和解のあと新しい紛争が生じているとみるべきではないかとおもいます。

 

PCB類・ダイオキシン類の胎児への暴露による健康影響については、現在の科学的な知見を総動員して研究し、次世代の患者さんをどのようなやり方で認定していくか、治療法とあわせて検討をすすめ、適切に対応をしていくべきとおもいます。

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いまのPL法と胎児性油症

カネミライスオイルの製造者とPCBの製造者は、ともに油症の原因企業として、社会的責任を果たすことを期待されています。胎児性油症についてもおなじです。

 

胎児性患者さんの問題が大きくなるにつれ、原因企業の社会的な責任はますます大きくなるとおもいます。

 

救済法における原因事業者

平成24年に、カネミ油症の被害救済の基本となる法律が制定されました。カネミ油症に関する施策の総合的な推進に関する法律、略して救済法です。

 

救済法は、カネミ油症の原因事業者を定義して、「カネミ油症が生ずる原因となった食用油を製造した事業者をいう」と定めています(2条4項)。

 

この定義によれば、原因事業者はカネミ油の製造者となり、救済法にもとづいて作られた基本指針には会社の名前が出てまいります。

 

ところが、救済法と基本指針のどこをみても、社会的責任を担うべきもうひとつの原因事業者はみあたりません。

 

PCB製造者の責務は?

 今後、次世代を含めた油症被害者の福祉の観点からも、いまの救済法が定める原因事業者の定義はこのままでよいのか、定義は狭いのではないか、考える時期に来ているとおもいます。

 

4者協議の必要性

 救済法のもとでは、国は油症患者の要望や意見を把握し、施策を効果的におこなっていくために、国、カネミ倉庫、油症患者の三者からなる定期的な協議の場を設けています(年2回、非公開)。

 

PL法の立法思想をカネミ油症救済のため社会のなかで生かしていくには、3者協議にPCBメーカーを加え、4者協議としていくことが望ましいとおもいます。

 

原因事業者の定義を改正するのが最善ですが、いまの救済法のもとで運用を検討することでも実現できるようにおもいます。

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協議ーステークホルダーミーティング

大気汚染公害では、社会的責任を負う者が集まって協議を開き、救済を検討していく仕組みが作られているそうです。ISOでは社会的責任に関する国際規格を作っていますが、これはステークホルダーミーティングのイメージにあっているようにおもえます。

 

カネミ油症についても、国や原因企業が社会的責任を果たして救済の仕組みを充実させ、社会的な信頼を得ていく活動が実現することを願っています。

 

国の責務

坂口力先生は国の初期対応の問題を指摘されています。

 

作家の有吉佐和子さんは複合汚染という小説で、昭和43年の2月から3月、100万羽のニワトリがダーク油に汚染された事件のとき、すぐに原因究明をせず人間の犠牲を食い止められなかったのは、明治以来博物学が弱いためだと書いていらっしゃいます。

 

いずれも貴重な指摘だとおもいます。

 

今後、4者で救済の仕組みを検討する協議の場がつくられた暁には、救済に関わる国の責務についてもぜひ考えていっていただきたいとおもいます。

 

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これでわたくしのはなしは終わります。

 

本日はご清聴いただきありがとうございました。

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発覚から52年という長い歴史をもつカネミ油症事件。被害者・支援者の方々にお会いしてまだ一年ほどの土庫にとって、プレゼントークは冒険でした。

 

集会ではこのあと、カネミ油症に関わってこられた弁護士の方が温かいコメントをくださいました。

 

長文をお読みいただきありがとうございました。

コメントがございましたらお寄せください。